ガバナンストークンとは、簡単に言うとプロジェクトの方針に対する発言権と投票権を持ったDeFiトークンです。株式会社の株をイメージするとわかりやすいでしょう。
DeFiとは、プログラムによって動く無人の銀行です。日本語では「分散金融」と呼ばれます。主な役割は、SWIFTのような国際間の通貨の換金や、WEB3プロジェクトの資金調達プラットフォームとしての機能です。
この記事では、ガバナンストークンについての過去の事例や特徴、取得方法から注意点まで、要点をまとめて説明していきます。
ガバナンストークンの生い立ちと注目が集まったきっかけ

ガバナンストークンはDeFiの中で生まれました。
DeFiはもともと、個人が法定通貨と連動した仮想通貨を複数持つことで、SWIFT[※1]よりも安い換金手数料を実現した仕組みでした。その手数料に加えて、ある特性を持ったトークンを付与することで、資金調達をより成功させたのがガバナンストークンです。
ガバナンストークンは、2020年6月にイーサリアムベースの融資サービスCompaound(コンパウンド)がユーザーへガバナンストークン「COMP」を配布したことがきっかけで注目されました。そこからガバナンストークンは世界的に話題となり、CompaoundはDeFiのリーダー的ポジションとなりました。
※1 SWIFT:
国際銀行間通信協会(Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication SC)の略で、世界中の銀行をつなぐネットワークです。1973年に銀行間の国際金融取引を仲介する共同組合(民間企業)として設立されました。銀行が外国送金を行う際に一般的に利用されています。欠点として、着金までに少なくとも3日〜1週間程度の時間がかかること、取引に関わるすべての銀行の手数料がかかるため手数料が高額になることがあります。
ガバナンストークンの特徴3選
ガバナンストークンの大きな特徴は、
- プロジェクトの運営指針に対して発言権が与えられる
- ガバナンストークン保有量に応じて、運営指針の議決権が与えられる
- ガバナンストークンを売却することで利益を得られる
の3つが挙げられます。
1つずつ見ていきましょう。
プロジェクトの運営指針に対して発言権が与えられる
ガバナンストークンを保有していると、対応するプロジェクトに対しての発言権を得ることができます。発言権を有したガバナンストークン保有者は、プロジェクトに対して新しい仕組みの提案や開発などについて発言をすることができます。
ただし、何に対しても発言権が与えられるわけではありません。 最初にプロジェクトを立ち上げたメンバーが、プロジェクトの進行を見て徐々に権利を分散化していく仕組みとなっています。そのため、発言権の対象はプロジェクトによって異なることに注意が必要です。
保有量に応じて、運営指針の議決権が与えられる
ガバナンストークンを保有していると、保有量の割合に応じて、運営指針に対しての議決権を得ることができます。
この議決権では、議決の決定方法を変えることもできます。
例えば、
- 賛成者の保有するガバナンストークンが過半数を超えたとき
- 過半数の人数の賛成と賛成者のガバナンストークンの合計が全体の7割以上のとき
などです。
この議決権も発言権と同じく、最初のプロジェクトメンバーが徐々に権利を分散化していきます。
ガバナンストークンを売却することで利益が得られる
保有しているガバナンストークンは常に価値が変動し、いつでも売却することができます。
例えば、対応するプロジェクトが上場すると、その価値が数十倍、数百倍と大きく膨れ上がるため、売却することで自身の購入額との差額で利益を得ることができます。
ただし、プロジェクトが上場するということはこれからプロジェクトが本格的に始動していくということです。投機目的でガバナンストークンを保有することは、プロジェクトにとっては悪影響になりかねないということも理解しておきましょう。
DeFiとガバナンスト-クンの3つの危険性

ガバナンストークンと、それを支えるDeFiに関して特に気を付けておくべき注意点として下記の3つがあります。
- ハッキングによる盗難
- ラグプル
- クジラによる影響
詳しく解説します。
ハッキングによる盗難
DeFiでは、裏側がすべて「スマートコントラクト」と呼ばれるプログラミングコードで作られています。このプログラミングコードがハッキングされ、仮想通貨が盗まれる危険性があるのです。
過去にはThe DAOがハッキングされ、約360万ETH(約52億円)が流出したという事件がありました[※1]。
2021年には、DeFiでの盗難・詐欺による損失額が累計105億ドル(約1兆円)だとするデータもあります(出典:暗号資産データ分析企業Elliptic)。
DeFiの市場規模は約1000億ドル(約11兆円)と言われているため、少なくとも11分の1が盗難や詐欺の被害にあっていることになります。
また、2020年と比べて、2021年の盗難・詐欺による被害は81%増加しているため、2022年以降はよりいっそう注意が必要と言えるでしょう。
※1 The DAO事件:
2016年6月にイーサリアムのプラットフォーム上の分散投資組織「The DAO」のシステムがハッキングされ、約360万ETH(当時の価格で約52億円)が盗まれた事件。盗まれた資金の対応として、既存のブロックチェーンとは別のブロックチェーンを作り、ハッキングを受けたブロックチェーンを分岐して、ハッキングをなかったことにできる「ハードフォーク」という方法が採用されました。このハードフォークにより、イーサリアムはイーサリアムクラシック(ETC)と、新しく生み出されたイーサリアム(ETH)の2つに分けられました。
ラグプル
ラグプルとは、DeFiプロジェクトの背後にある開発チームが、スマートコントラストにロックされた暗号資産を売却もしくは排出することで、投資家の資金を逃がす詐欺のことです。
すべての暗号資産詐欺の収益の35%以上はラグプルだと言われています(出典:暗号資産データ分析企業Elliptic)。
ラグプルは現実性に欠ける年利率(APY)を約束することで投資家を募るという特徴があります。すべての高金利のプロジェクトが詐欺というわけではありませんが、このような場合は注意が必要でしょう。
また、SNSチャンネルが偽装であったり、すべて匿名で運営していたりする場合も注意が必要です。
クジラによる影響
クジラとは、トークンを大量に保有しているユーザーを指します。
プロジェクトに対して議決権を得られることがガバナンストークンのメリットだと紹介しましたが、一部のクジラによってプロジェクトの方針が偏ってしまう点がリスクとして挙げられます。
例えば、全体の20%のガバナンストークンを持っている人が3人いれば、その3人の投票で提案に対する採否が大きく左右されてしまいます。
プロジェクトによってはガバナンストークンの取得に限度が設けられている場合も多いので、よく確認をする必要があります。
ただ、この指摘に対して、「クジラは自分たちの資産がその分多く投入されているのだから、プロジェクトを自ら改悪にはしない」「多くのガバナンストークンを保持しているのだから正当な権利だ」といった反論もあり、現在も議論が続いているのが現状です。
ガバナンストークンを取得する方法3選

ガバナンストークンを取得する方法はプロジェクトによって様々ですが、主な取得方法を3つご紹介します。
- 仮想通貨を預け入れた報酬として受け取る
- エアードロップ
- 買取
仮想通貨を預け入れた報酬として受け取る
1つ目は仮想通貨を預け入れた報酬として受け取る方法です。これが一番オーソドックスな受け取り方です。
例えば、いま日本で最も注目を集めているパブリックチェーンの1つに「Astar Network」があります。
Astar Networkでは、仮想通貨「Astar(1Astar=19円程度)」を預け入れると、その数%の利息として、ガバナンストークンを受け取ることができます。
ただ、預け入れるといっても「ステーキング」と呼ばれる、利息をAstarとして受け取る方法もあるので注意が必要です。
エアードロップ
2つ目はエアードロップです。エアードロップとは簡単に言うと、トークンの無料配布のことです。
エアードロップについてもっと詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
買取
3つ目は買取です。実際にガバナンストークンを持っている人と仮想通貨で取引することでガバナンストークンを得ることができます。
買取は、仮想通貨取引所の口座を開設したのちに「クレジットカード」もしくは「仮想通貨の送金」で行うことができます。
まとめ
今回はガバナンストークンの基本的な情報から「特徴」「危険性」「取得方法」をご紹介しました。
ガバナンストークンはプロジェクトによってルールが違うので、もっと詳しく知りたい方は実際に取得してみるのもいいかもしれませんね。
当サイトでは他にも「NFT」や「メタバース」関係の記事を多数アップしているので、そちらも是非ご覧ください。
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